マイラ・リューインより
今は9月です。そして今月の半ば頃から ヴァータ の季節が始まりました。日がほんの少し短くなるにつれて、ここハワイでさえ夏の暖かさが薄れていくのを感じます。あなたの住んでいるところでは、もしかしたらもう初霜が降りたかもしれませんね。
1年のこの季節は自然も内側に籠るようになっていきますが、これはヴァータの動く性質にバランスをもたらすための自然な反応です。あなたがそれに習いたくなるのは至極当然のこと。外出よりも家にいて、もっと自分のケアをしたくなるかもしれません。オーブン皿を取り出して、やわらかくて美味しいベイクドパンプキンをじっくりと焼きたくなる かもしれません。あなたの内なる叡智にしたがってください。ゆったりとくつろぎながら、滋養を自分のもとへ呼び込んでください。
バランスのとれた健康のためにヴァータを制する
秋、冬が近づくにつれて「風邪と流感の季節の到来だ」などの声を聞くことが多くなるでしょう。けれど、それはあなたが許可すればそうなるだけのこと。ヴァータはそもそもが不安定な性質で、体を巡るプラーナの流れを妨げて病気の可能性を生み出す潜在力をもっています。ですが、ヴァータと仲良くさえなればあなたは健康でいられます。きちんと健康に気を配り、そして毎日 アビヤンガ をしたりその他のセルフケアを実践していれば、あとは季節の変わり目に微調整をするだけです。これを1年を通しての習慣にしてしまいましょう。そして誰かに「風邪と流感の季節が来ましたね」と言われても、あなたはただにっこりと微笑み返せばよいのです。
ヨガとアーユルヴェーダでセルフケアを
セルフケア、それは自分のハイヤーセルフ(高次の自己)のケアをするということ。これがアーユルヴェーダとヨガの根幹であり、真の健康の要です。アーユルヴェーダとヨガでは、真の健康とは病気が全くないこと以上のものだとみなしています。自分の真の姿を慈しみながら心身のケアをするのです。そうすれば、無限に広がる魂とともにあなたの道を歩くことができるようになるでしょう。
アーユルヴェーダやヨガ的観点からみた「セルフケア」は、多くの人がこの言葉に当てはめる意味とは別物です。美顔やマッサージだけを指すのでもありません(それも一部ではありますが)。アーユルヴェーダとヨガでいうセルフケアの実践とは、毎日自分の心と体に触れるということ。きちんと自分の内側をみつめ、日々のささやかな実践を続ける。これが大きな変容へとつながるのです。例えば1日3食規則正しく食べること、アビヤンガ、自分のエネルギーの管理、日々のプラーナヤマや瞑想 、ヨガ・アーサナを通して体の自然のしなやかさを支えること。このようなセルフケアをすることこそが、mokshaモクシャ(解放)、すなわち人生の究極のゴールへと向かう道を歩むことなのです。
「セヴァ」としてのセルフケア
Seva セヴァ(奉仕)をなんの見返りも期待もせずに実践するあなたは、魂として成長します。セルフケアは、あなたと真我を結びつけ、あなたを隅から隅まで健康にし、偽りなきところからの純粋な気持ちで自ら望んで与えることができるようになる道へと導きます。セルフケアの行為はそれがどんなものでも、あなたにセヴァの方向へと歩ませるものであるはずです。 パンチャカルマで毒素を手放す、朝食を食べる、毎日瞑想する。これらのどれを実行しようとも、そのほうが見た目がよいから、とか、苛立つ症状を無くしたいから、などの理由だけで実践してはいけません。あなたの行いはすべて、あなた自身や愛する人たち、あなたが出会うすべての人たちのために、あなたがもっとしっかりと存在するためにあるのだ、とはっきりと意図を定めてください。これこそが世の中に癒しをもたらす方法なのです。
小さな行為の効果はしっかりと蓄積します。だから、時間がないからといって実践をお休みしないで下さい。アビヤンガの後に20分瞑想する時間がないのなら、たった5分でよいのです。なにもしないより、少しだけでもした方がよいのです。ヨガ・アーサナのための時間が足りないなら、ポーズを3つ選んでください(もしくは タダーサナ(山のポーズ)で立って 15呼吸ホールドしましょう)。ゼロよりも、ほんのすこし、が大切なのですから。
セルフケアのための時間を作る
多くの人が心身のためになることをする時間がないと言います。けれどたいていの場合、身にまとっている抵抗の鎧を1枚ずつ脱いでいくと、実は単に負の影響の出ることに多くの時間を費やしていたことがはっきりと見えてきます。必要なのは、優先順位の書き換え、そして一度に一歩ずつ歩むようにするということ、それだけです。
セルフケアでまず大事なのは朝6時前に起床することです。これなら、1日の用事が始まる前にお風呂に入り、瞑想をし、すこしアーサナの練習をして、他の実践項目もこなす時間的ゆとりがもてるでしょう。就寝の1時間前には電子機器を消して、足の裏にオイルを塗布し、 感謝リストを書き記します。自分を慈しみ育む時間を日課の一部に入れてしまうのです。
ディナチャリャすなわち日常の習慣、これが大きな変化を生み出します。それはとてもシンプルなこと。つまり、1日をスケジュール化すると、回り道が少なくなる、それだけのこと。内観の時間をスケジュールに入れましょう。食事は毎日同じ時間にとりましょう。たとえ大きな仕事が舞い込んできたとしても。そうすれば食事を抜いたときよりも強さがもてて、しっかりと能力を発揮することもできます。
でも、どれほどディナチャリャに忠実でしっかりとした食事をしていようとも、自分の態度も改めなければ大きな変化は見られません。なにかが難しく感じられたときは視点を変えるとよいでしょう。困難な状況の中で、どこに柔らかさを見出せるでしょうか。ストレスの多いときにも呼吸とつながることはできますか?ここに集中するのです。状況が難しいし、そこから回復するために真逆に走ることも難しい、などという考えに意識を向けてはいけません。その中間点が見つかれば、セルフケアは1日の流れの中で自然に簡単にできるものになるでしょう。